こんにちは。今回はエンジンからの主な排気ガスの種類と発生原因について書いていきます。
一酸化炭素
- 酸素が一つ足りない二酸化炭素。COで表す。
- 燃料として炭化水素、つまりCとH、酸素と水素を含むものを燃料として使う場合にCO2とH2Oになるが完全にCO2にならないで排出される場合や一度CO2となるが戻る場合もある。
- ヘモグロビンと300倍結びつきやすい。
- いきなり倒れることはないが、有害である。
- 酸素が足りない条件で燃焼した場合にできやすい。
炭化水素
- 燃料が燃えないでそのまま排出されるものを表す。
- 英語で言うとUnburned HCと言う。
- 炭化水素は光化学スモッグの原因となる。
- 火花点火機関で希薄燃焼をさせようとすると多くでてくる。
- ちゃんと燃えた場合でも壁面付近では温度が低いのでそのまま出てきてしまうことがある。
- ディーゼルでは空気だけ入っていて燃料を吹き込むので壁面に到達することが少なく、空気過剰率が高いので火花点火機関より炭化水素の排出が少ない。
窒素酸化物
- NOxで記し窒素と酸素の化合物を何種類かまとめて言っている。
- 主なものとしてNO2、NOがある。
- エンジンから排出されるのはほとんどNOであり、排気管からでてくる過程で酸素と結びついてNO2となる。
- ニトロ化合物になるので光化学スモッグの原因にもなる。
- NOがたくさん排出されるとオゾンと反応し、NO2となるがそうなるとオゾン濃度が減るという報告もある。
- 有害性として水に溶けて硝酸になるので酸性雨の原因となる。
- 人体にも中枢神経に悪影響を及ぼす等の影響がある。
NOの生成機構
- NOができる機構はかなりメカニズムが分かっている。
- サーマルNOとよばれる空気中の窒素と酸素が高温下で反応して生成されるものが最も多い。
- NOができる反応は温度依存性が高く、高温になるだけで生成される。このことは化学反応全般に言うことができる。
- 空気中の常温では反応が全くできていないわけではないが温度が高くなると10の何乗倍の反応速度になる。
- ゼルドビッチ機構と呼ばれる反応機構で説明される。N2やO2は非常に安定性が高い。また、温度が低いと粒子の速度が小さいので反応しにくい。温度が高くなると反応性が高いNやOが発生してくる。これらは非常に反応性が高くNO(窒素酸化物)ができやすくなる。ディーゼルエンジンからのNOの主たる生成機構である。
- 空気を酸化剤として燃焼させている以上生成してしまう。
ゼルドヴィッチ機構
高温になって発生したNとOが酸素や窒素と結びついて生成する。この時にもNとOが生成されるので反応はねずみ算式に急拡大していく。
その他のNOの生成機
- フューエルNO・・燃料中に窒素分が含まれていると酸化されてNOができる。燃料中のNが100%NOになるわけでない。しかも、燃料中のNは非常に少ない。
- プロンプトNO・・・ゼルドビッチ機構の反応速度が詳しく調べられている。計算で予測できるようになっているが、ゼルドビッチ機構では説明できないNOができるメカニズムがあることが分かってきた。これをプロンプトNOと呼ぶ。
硫黄酸化物
- SOxで表す。
- 硫酸になるのでエンジンのライナーを摩耗させるなど異常摩耗の原因となることがある。
- 硫黄の燃料ガス中の濃度が分かれば排気ガス中の濃度も計算できる。
粒子状物質
- PMとも呼ばれる。
- 生成機構も難しく計測するのも難しい。
- ISO8178-1のっ基準では排気をフィルターに通し、そこに付着したものをすべてPMとしている。
- 発がん性物質を含んでいて肺がんの原因となる。呼吸器系の疾患としてぜんそくになる可能性もある。
- 粒子状物質は三種類ぐらいから構成されている
- 粒子状物質というとすすのイメージがあると思うが、すすとは炭素に少し水素がついているものであるが、フィルターに全部集められたものはPMと判断される。
粒子状物質の分類
- すす
- SOF(ソフ)
- 硫酸塩(サルフェート)
粒子状物質のかたち
- その中に入っているものを調べると固形のすすが入っている。熱分解ですすの核となるものが生成されて燃焼とともにそれが成長していく。酸素不足だと生成されやすい。燃料だけの領域がディーゼルではできやすい、その領域にある燃料は蒸し焼きみたいになってすすの核ができやすい状況となる。
SOF(Soluble Organic Fraction)…未燃の燃料や潤滑油が主成分であり、発がん性が指摘されている多環芳香族(PAH)が含まれている。壁面近傍で火炎が冷却されて消炎される場合に生成する。
硫酸塩(サルフェート)…燃料中の硫黄分のうち1%~2%ぐらいがサルフェート(硫酸ミスト)になる。排出量は燃料に強く依存する。
- 未燃の燃料や潤滑油が粒子状物質の一部となる。
- 温度が高いと気体だが温度が下がると液滴なり粒子状物質としてふるまう。
- 硫酸ミストとサルフェートと呼ばれるものも温度が下がると粒子になるのでPMとなる。
- すすは10ナノから80ナノぐらいの大きさで粒子がブドウ状や鎖状につながっている。その周りに液体状のドロッとしたものがついていたりする。その周りにサルフェートと呼ばれるものがくっついたりしている。
- 燃料や潤滑剤からのものは有機溶媒にとけるのでソフと呼ばれ、それ以外はアイソフと呼ばれることがある。
- ディーゼルエンジンからも出てくるPMだがサスペンデッドPM(SPM)と呼ばれるものがある。
- これはエンジンに限らずに大気中にふわふわ浮かんでいるPMという意味である。
- 10ミクロン以下に限られる。10ミクロン以下だと大気中にふわふわ浮かんでいられる。
- たくさん車が通る道ではこの物質の基準を守るのは難しい。PM10とSPMは少しだけちがう。2009年に環境基準が引かれたものとしてPM2.5と呼ばれる環境基準が引かれた。粒子が小さいと鼻毛とかで捕まらないで肺の奥に入り、そのまま血液中まで行くことがある。
- これが体に特に悪いとことが分かってきたので新たに基準となった。
二酸化炭素
- Cが燃えると必ずCO2となる。炭化水素燃料を使う以上避けられない。
- 地球温暖化の原因となっているとの報告もある。
ディーゼル機関の排気対策
- 基本的には内燃機関の課題と同一である。熱効率の向上とNOxとPMが課題になっている。クリアーしていけばエンジンは動力源としてしばらく使われる可能性がある。ディーゼルエンジンはCOとかHCは少ない。SOxは燃料に入っているかどうかで排出が決まる。